CuirVeloの「Cuir」キュイールはフランス語で「革」を意味しています。
私たち職人が毎日接している革についてご説明したいと思います。革のことをとことん詳しくというよりは、普段使うのに知っておくことでより革製品を持ちたくなるようなお話をしたいと思います。
なめし
「なめし」とは動物(脊椎動物)の皮膚を私たち人が使うために加工することを指します。一番の役割は皮が腐敗しないようにすること。その起源は古く、紀元前200万年前から存在したといわれています。狩りなどで捕った動物の皮を腐らないように干し、乾燥し固くなった皮を叩き、もみほぐすことで道具や、衣類、装飾として使われてきました。
このように「なめし」とは「革」を「柔らかく」と書いて「鞣し(なめし)」と書き、皮を腐敗させず、さらに固くなった繊維をほぐすことを「なめし」と呼びます。
タンナーとは?
「タンナー」とは革を作る工場また、その職人さんのことをいいます。革をなめす「タンニン」から取られ「タンナー」と呼ばれます。世界共通でこの呼び方をしています。
「革」と「皮」
革と皮どちらも「かわ」と呼びますが、革とは主に動物の皮膚から毛を取り除き、なめされた状態のこと。
なので「大将、ねぎまと鳥皮、あと、エアコン直当たりで寒いから毛皮のコートひとつ」の皮は「皮」。「革ジャン、革パン、革靴、グラサンでキメてるおじさん」の革が「革」ということになります。
なめしの種類と特徴
ただ干して、固くなったものをほぐしただけの革だと耐久性や耐水性(この状態の革は一度濡れると乾いたときまたカチカチに戻ってしまいます)がなく、すぐに使えなくなってしまいます。そのためあらゆる方法が試され、様々な「なめし」方が考えられました。現代の革に残っている代表的ななめし方をご紹介します。
タンニンなめし
植物の渋(タンニン)を使い鞣されます。このタンニンが革の繊維を柔らかく、しなやかにさせながらたんぱく質を結合させ、凝縮させる働きを持っています。仕上がった革は、固くありながら曲げや打刻などをした際にその状態をとどめる「可塑(かそ)性」という特徴を持った革になります。
クロムなめし
クロムと呼ばれる鉱石から由来される化合物を薬品化した塩基性硫酸クロムを使い鞣された革。タンニンよりも繊維を素早くほぐすことができ、より早く革に鞣すことができます。ただし繊維を凝縮させる力は弱く、仕上がった革は柔らかくソフトでコシ(可塑性)の無い革になります。1800年代に発明され、今では世界の80%以上がクロム鞣しといわれております。
コンビなめし(ヘビーレタンなめし)
その名の通りタンニンとクロムのコンビによる鞣し革。塩基性硫酸クロムを使用しつつタンニンも入れることで素早く、なおかつコシ(可塑性)のある革に仕上がります。タンニン鞣しとクロム鞣しの間に位置します。
着色と特徴
革には様々な色がありますよね?それはもちろんカラフルな牛がいるわけではありません。なめした革に着色をしているからです。その着色にも種類があり、その方法によって革の風合いに大きく左右してきます。
顔料仕上げ
革の表面に顔料を塗り着色します、革の表面が色により隠れるので傷やシミなどが目立ちにくくなります。革の表面に顔料が乗っている状態(表面を覆っている状)のため、見た目を左右するのは「牛」よりも「人」になってきます。
染料仕上げ
染料で染めて着色します。染料は革に浸透するため表面の傷やシミなどはそのまま表れ、色だけ染まる状態です。見た目は「牛」が生前過ごした環境に左右されます。顔料よりもより自然に近い風合いとも取れます。
タンロー
着色をする前の状態。そのため比較的傷やシミが少ないナチュラルビューティーな「牛」が選ばれます。
色々な仕上げと特徴
革には着色以外にも様々な仕上げにより表情が変わります。代表的な仕上げ方法をご紹介します。
オイル/ワックス
革の表面にワックスを塗り込んだり、革全体にオイルを染み込ませる加工。これにより色にムラ感が出たり、使用することで馴染み変化していく特徴があります。
型押し
革の表面に型を押す加工。ヘビやワニ、幾何学模様など様々な柄を表現することができます。
シュリンク
革を収縮させる加工。革をなめす際に薬品を使い、収縮(シュリンク)させることでランダムなシワのある革になります。
銀スリ
革の表面をヤスリで磨く加工。これにより表面は毛羽立ちマットな質感になります。スウェードやヌバックもこの加工により生まれます。
まとめ
このように革は最古のファブリックといえ、その歴史の中で様々に変化し、進化してきました。そんな何百万年と伝わり続ける革の説明をこのブログや私には描き切れるわけもなく、今回お話ししたものは一般的に知られているほんの一部です。
最後に、ここまで革が長く伝わり続けるにはもう一つ忘れてはいけない理由がありました。それは革が人の食べる食肉の副産物であるということです。頂いた命を余すことなく使う。その原点を忘れてはいけません。
しかし、革=副産物といって、良いことばかり並べるわけではありません。近年は環境問題、食料問題の観点から、家畜自体が見直される時代になってきています。食肉が無くなれば革も無くなります。そうならないためにも革を知るということは重要な事なのかもしれません。
なんか、少し重めな話になってしまいました。。。
では最後は軽く。ということで、「革って変わってますよね」
以上、今私たちが手にしている革製品にさらに興味が湧いていただければ幸いです。